マンション管理と購入の注意点

快適なマンション購入のポイントは、
購入前に現状を知ること!


中古マンションの「現状」とは、何を知ったらいいの?

中古マンション購入後に、「そんな事、知らなかった。」と言ったトラブルがあります。
例えば・・・
●マンションの管理費が不足していて十分な管理が出来ていない状態だった。
●マンションを買ったとたん、管理費不足から値上げで管理費が2倍になってしまった。
●修繕積立金が少なくて、次回の大規模修繕工事では十分な改修が出来ないらしい。
●このままでは修繕積立金不足で、次回の大規模修繕工事で不足金を住個別に集めることになるらしい。
●マンションを買ったら、管理組合が前回の大規模修繕で借金をしていたことがわかった。

なんて話を聞いたことありませんか?
しかし実際にあることなのです。

買主が購入しようと考えているマンションがもし、そんな問題を抱えているのであれば、
そのことを事前に知る方法はあるのでしょうか?

このような情報を知るには、貴方がマンションの内覧に行っただけでは分かりません。
本来は、事前に買主自らが調べて、状況を納得してから購入するべきなのです。

でも、
『そんな情報は、自分たちでは調べることが出来ないし、調べる方法もわからない。』

そうですよね。実はこの情報を求める事ができるのは、売主等の利害関係人(例えば所有者等)又は
依頼を受けた宅建業者でしか閲覧することが出来ません。
購入しようとする買主が直接問い合わせても教えてくれない情報です。

もし買主がマンションの問題点を事前に知っていて購入したのであれば、
たとえ同じ問題だとしても、住んでいる安心度合いは断然違います。
(例えば、管理費の値上げを事前に分かっていれば、その金額を考慮して支払い額を組みます)
今後の住まいや暮らしの不安は限りなく少なくなります。

この[中古マンションの調査]というのは、なにも管理費と修繕積立金の話だけではありません。
例えば、
●マンションの理事会は輪番制か、また年に何回開催されているか
●ペット飼育は可能か、楽器の演奏は可能か、雨漏りや心理的瑕疵は無いか
●等があります。
この後、詳しくお話しいたします。

マンションはどこを見て買うべきなのか?

「マンションは管理を買え」と言った話を聞かれたことがあると思います。
それほどマンションは『管理』の状態が大切だ、と言う意味です。

そこで、
この『管理』は誰が行っているのかと言いますと、マンション管理組合が行っています。
マンション管理組合は、各部屋(専有部分)をもつ所有者(区分所有者)等で構成されています。
買主がマンションを購入すると、希望するしないに関わらず、全員がこの管理組合の組合員と
なります。

賃貸マンションには、 マンションの管理組合なる存在はありませんよね。
所有者はマンションのオーナー1人(会社の場合も)ですし、管理はそのオーナーが行います。

しかし、分譲マンションでは区分所有者で構成された管理組合が、理事会を中心に管理業務や
修繕計画等の運営を行います。簡単にいうと、所有者全員が持分に合わせたオーナーになる訳です。
管理が行き届いているマンションは、常駐する管理人や日々の清掃などで美しく保たれており、
マンション自体の価値も高く評価されるわけです。

そして、
管理費に不足なく運営されており、十分な修繕積立金を持っているマンションである事を確認して
購入する事が、安心できる暮らしを手に入れるという事につながります。

管理費が不足しているマンションだと、毎月の管理費や修繕積立金がどんどん上がってしまい、生活を圧迫する
事になっていまいます。

そこでもし、管理費が不足していた場合はどうなるか、詳しく説明いたします。

マンション管理費や修繕積立金が不足している場合はどうなるの?

マンションを購入すると、買主は月々のローンとは別にマンションの管理費と修繕積立費を毎月納める事となります。

この内の管理費とは、マンションを日々管理継続するための費用で、マンション管理会社へ支払ったり、植栽管理や清掃、日々の改修等に使われます。

もう一つの修繕積立金とはその名の通り、建物の修繕、特に12年~毎に行われる大規模修繕工事の費用を主として積み立てられます。

そこで、もし、
管理費や修繕積立金が足りないマンションだったらどうなるのだろうか?
それ、とっても気になりませんか?

実は、お金のあるマンション管理組合と、お金のないマンション管理組合は現実にあります。

こういった情報があります。(驚かないでください)

国土交通省による調査では、築浅・築古問わず約35%の組合が、 「現在の資金が大規模修繕計画に対して資金が不足している」と回答しています。
そして、 全国で1981年5月31日(旧耐震)以前に建てられたマンションのそもそも耐震診断をしていない 組合は65%もあり、耐震診断をして耐震改修が必要という判定を された内38%が今後 改修を行う予定が無いと回答しています。
また、東京都の調査によると、管理不全の兆候ありとされたマンションの約60%は、 築40年以上経つのに大規模修繕を一度もしていないと回答しています。

国土交通省の調査データ及び2021年12月東京都への管理状況の届け出より抜粋

これを読んでちょっとびっくりしませんでしたか?
こんなにもお金のないマンションが多いなんて。
そうなんです。管理費や修繕積立金の不足しているマンションは数多くあります。
もっと言えば管理組合すらないマンションもあります。
買主が調査をせず、その事を知らないまま購入したらどうなるでしょうか?

『そんな物件買わないし、不動産業者も教えてくれるはず。』
そう思いますよね。その話も後でお話しします。

では、マンションに管理費や修繕積立金が足りない場合、管理組合は以下の様な対処があります。

対処1:管理費が足りない場合管理組合は管理費を値上げ又は不足分を徴収することが出来ます
(マンション標準管理規約第61条2項 管理費に不足を生じた場合には、管理組合は組合員に対して第25条第2項に定める管理費等の負担割合により、その都度必要な金額の負担を求めることができる。) 
勿論、管理費を抑えるために管理会社との業務時間の短縮や価格の交渉したり、管理会社との契約をやめて自主運営に切り替えるマンションもあります。 

対処2:修繕積立金の場合は、長期修繕計画書まであと数年後に行う事が予定されている場合、その時の積立金で大規模修繕工事ができるかどうかがポイントです。 不足するのであれば、不足分をどのように調達するかを決めないといけません。
調達方法は、不足分を段階的に値上げをするのか一時金を集めるのか借金をする(マンション標準管理規約第63条)か、又は時期を遅らせるかの選択が管理組合・区分所有者に問われます。一時金ならば10万20万ではなくマンションによっては100万円単位になる可能性もあります。

また、注意すべき購入時のチェックとして、現状の修繕積立金が負債になっているケースがあります。
この場合は、マンションという物件自体が現状で負債(借金)を持っているという事です。
購入者はマンション購入時にローンをしているにも関わらず、マンションの運営でも借金をしている2階建てのローンということになります。
大規模修繕か何かで一時金等を出さないで借り入れをした訳ですが、次回の大規模修繕時はこの借金の上に更に修繕費を上乗せすることになりますから、各区分所有者の負担は更に大きくなります。
予測としては前回、修繕積立金を値上げや一時金を出す事も無かったという事は、もしかしたら値上げに対する区分所有者の反対があったのかもしれません。いずれにしても購入すれば今後問題となる可能性は高いでしょう。

マンションの調査をするとこういった情報を読み取ることが出来ます。
買主はそのマンションの、現状を知らずに購入していたらどうなっていたでしょうか?

実際に、築浅・築古のマンションでもこういった問題を抱えるマンションは多くあります。
タワーマンションでも管理費が2倍になったり、共用スペースのサービスが無くなったりしているのを聞きませんか?
購入してすぐに管理費や修繕積立金が2倍、3倍になったという話は、よくある話ですし、
その為、返済額が厳しくなり、購入後手放すことを決めた住まい手さんもいます。

大切な事を言いますね。

今回説明した様な、
管理費や修繕積立金の不足しているマンションが、中古マンション市場で普通に流通しています。

買主が買おうとしているマンションに、管理費や修繕積立金が十分あるのか無いのかを知る事は、
そこで暮らしてゆく上でとっても 大切な情報です。

しかし残念な事に、購入者がこのマンションの管理状況について十分な情報を知った上で購入出来るケースは、とっても限られています。
特に不動産業者の担当者では、こういった事項をアドバイスするのは難しいでしょう。
なぜなら、そこまで説明すれば、管理費や修繕積立金の不足しているマンションを買う人が居なくなりますよね。
そうすると、物件は売れなくなりますよね。

分かりますでしょうか?
それを説明するということは仲介に至らず、仲介料を受け取ることが出来ません。
だから出来ません。

反対に購入する側にとっては、購入した時点で負債(借入)のあるマンションを買うことは、将来におけるリスク付きで購入する事になるわけです。

大切な事は、情報を知っていて購入する事

これらの情報を得るには、事前に調査を行う必要があります。

それって、不動産会社は売買で調べてくれないの?
と、思われる方はいるでしょう。 

当然、基本的な事項は調べてくれます。しかし、その調査内容に大きな違いがあります。
以下にとの違いを表にしてみました。

下の表は不動産業者が売買契約前に説明を必要とする重要事項説明に含まれる説明項目と、
当社の物件チェックを比較したものです。一目で違いは明らかですよね。

表の左列は調査項目、中列は不動産業者として重要事項説明に必要な項目、そして右列が当社の調査項目です。
 

中古マカンション物件チェック
不動産売買時に説明する重要事項説明と、当社【中古マンションの物件チェック】比較表

明らかに調査の内容が違うのに気づかれましたでしょうか。
ちなみに不動産業者が調べる項目は、後で説明します重要事項説明書に記載すべき項目です。
この中に現在管理費が不足しているとか、修繕積立金が次回の大規模修繕時に予算が不足するかどうかといった項目はありません。

不動産業者は、不動産契約に必要な情報を調べます。

実際に、売買契約前の重要事項説明書にはここまでの記載が求められていますので、
これに必要な範囲での調査を行います。
参考に不動産売買に使う重要事項説明書の関連ページをあげておきます。
この2ページで終了です。

奈良県中古マンションリノベーション
不動産契約に使う重要事項説明書の区分所有建物部分はたった2頁です。

以下は、重要事項調査報告書(書式例)です。
この書面は、不動産業者がマンションまたはマンションの管理会社にてマンションにおける情報を収得する際に受け取る書類です。この書類には、マンションの管理方法や共用設備の使用状況、管理費・修繕積立金、修繕状況といった建物全体の管理に関する内容が書かれており、これを基にマンションの状況を分析します。
管理会社が発行してくれますが、この書類、印刷するだけですが何万も掛かります。

これらの情報は、重要事項調査説明書(参考)に記載されているものです。

これに対して、
買主が購入の際に本当に必要な情報とは?

買主が本当に必要な情報とはなんでしょうか?
それは、今後の管理費予測長期修繕計画書からの修繕費の予測です。

私が作成した調査表に記載されていない重要な点が3つあります。
これが一番重要だと言っても過言ではありません。

1つは、実際に管理費が充分足りているか否かです。 
不動産売買で使う重要事項説明書には、この表記はありません。
不足になっていれば、今後値上げ等が考えられます。
管理費が不足しているのであれば、マンションの収支報告がマイナスとなって表記されます。

もう1つは、大規模修繕をするのに実際の修繕時期の時点で足りているのかです。
これも不動産売買で使う重要事項説明書には、表記はありません。
現状の修繕積立金の情報だけでは、実際に大規模修繕時に不足するかしないかは分かりません。
大規模修繕時の時期は、いつなのか?
それはマンション独自で作成している『長期修繕計画』を見れば、いつ次回の大規模修繕工事を行うかがわかります。
この時点で、必要な予算が積み立てられているかどうかにあります。

修繕積立金は、現在〇〇〇〇万円あります。(重要事項説明時に記載)と、
予定年度の大規模修繕時には、修繕積立金が〇〇〇〇〇万円必要というのは、意味が違います。
予定年度に必要な積立金が貯まっているかどうかが、一番知りたい情報なのです。

最後の1つは、長期修繕計画があるかです。
これは、修繕積立金の額の目安の算出に用いるもので、〇〇年には次回の大規模修繕工事を予定し、
〇〇年には給排水管の取り替え工事を行うといった、マンションの建物管理を長期的な修繕計画として 立案したもので、社会事情の変化に合わせるため、国土交通省も5年程度で見直すことを勧めています。

この長期修繕計画書を基に次回の大規模修繕時に修繕積立金が予定通り貯まっているか、そこを見極める必要があります。
ちなみにどのマンションでも長期修繕計画書を作成している訳ではありません。ずっと以前のものしかないというマンションも多くあります。管理組合もその重要性に気づいていないのです。
更に、重要点として、この計画書には近年の建築工事費の高騰を考慮されているかにも注意するべきです。
下に一般財団法人建設物価調査会が調査した物価指数がありますので見て下さい。

例えば、2018年1月〜2023年1月間を見ると、この5年間で約20%の工事費の上昇が見られます。
対象マンションの長期修繕計画で、大規模修繕工事の工事予算が5年前の建築費の算定であれば、
すでに20%の価格上昇しているということです。更に古い長期修繕計画書であればもっと差があることでしょう。
この上昇分が見込まれていれば良いですが、そうでない場合は工事予算が不足することになります。

中古マンションを購入する際は、長期修繕計画に記載されたこの建設費の上昇分をどこまで見ているのかというのも、大切な指標になります。

奈良県中古マンションリノベーション
一般財団法人建設物価調査会HPより

 マンションを購入するには、そのマンションのお金事情のことを知る必要があります。
それを調べてから購入しても遅くはないと私は思っています。

買ってからマンションのお金がなくて、管理費の値上げや値上げや一時金の徴収なんてやってられませんよ。
何せ、これだけ人件費や建築費の高騰があれば、マンションの持つ資金は不足するのが目に見えています。
間取りや価格だけでなく、私はマンションの財務表を見てから買ってもいいと思います。

株式会社奈の町
浅野勝義