シニアの住み替え計画

 

 

50代の方からの住まい探しについて、ご相談をお受けしました。
皆様の参考になればと、こちらにも投稿しておきます。

その方のお話をお伺いしていると、
ご主人がもうすぐ定年で、新しい住まいで趣味のメダカを育てたい。
その為に現在の借家から1戸建てに移りたい。
そんなお話でした。
予算としましては、頭金が少なく住宅ローンを組むというお考えでした。

と言っても、支払いを考えると流石に50代から高額なローンを長期で組むことは
お勧めできません。
出来るだけ予算を押さえた中古物件が宜しいかとアドバイスさせて頂きました。

建物だけでなく敷地の条件も検討する必要があります。
定年後にやりたい事、選ぶべき土地、暮らし易い住まい、融資のバリエーションなどを
考えて”住み替え”を計画していきましょう。

 

家でいる時間が長くなる

大空間に薪ストーブで火を見て愉しみたいというのがご希望でした。外部のデッキを挟んでご高齢のご両親とも交流が出来るようにしています。

今年、私自身が60歳となり、周囲に定年した知人も出てきました。
定年するとどうしても若い頃より家に居る時間が長くなります。

定年という言葉は、以前では”社会の関わり”が終わるというネガティブなイメージより、
“第2の人生”の始まりという様なポジティブなイメージを持って暮らしたいもの。
だって今の60歳は昔と違って全然若いですから。
私たちの子供の頃は、60歳の人ってもうお爺さんでしたよね。
少なくとも、定年が60歳というのは早いと思うのは私だけではないと思います。

定年後には自分が昔からやりたかった夢を実現したいと、新たな道へと進む方が
出て来るのも、この”定年”という節目ではないでしょうか。

例えば、
木工を始めたいとスクールへ入学する方、料理を本格的に始めたいという方、陶芸を始められる方もおられます。
今までずっとやりたかったのでしょうね。

私が設計をさせて頂いた方であれば、
農家をする。今度は農家を愉しみたい。(そう言えば私の父もそうでした)
薪ストーブを使って楽しみたい。好きな家で火が燃えるのを見て時間を過ごしたい。
世界遺産を見て回りたい。その為に 奈良公園付近に家を建てた方もおられました。
それから、
現在の仕事を更に一段階事業拡張したい。その為に土地を探して事業所を建てる。
そんなポジティブな考えを実現された方もおられます。

若い頃には諸事情があって出来なかった。
この年になって、やっとお金の為の仕事から解放され、生活の為に働く事を考えず、したいことを始めたい。

そんな住まい手さんの想いのサポートを続けていくのが、私にとっての第2の人生の愉しみになっています。

 

物件選択の条件


物件を探すと一言で言ってもどこでもいいと言う訳ではありません。
暮らしを考える上で、若い人だから可能な物件もあります。
それに気づかずに価格や見た目で購入してから気が付くといった事の無いように、
購入前の検討時からチェックしておくべきアドバイスです。

○買い物や医療施設等が近い地域
終の棲家として考えるのであれば、買い物や病院へは徒歩圏内で考えるのがよいでしょう。
車を使っての買い物は何時までも乗れるものではありません。

○敷地までにアップダウンの少ない地形
ニュータウン内でアップダウンが激しい場所は、住まいへ到達するまでに疲れてしまい、
外出を避けてしまいがちになってしまいます。
これ、意外にあります。車で現地を見ただけでは状況が掴みにくい事が多く、
実際に自身で歩いてみるとアップダウンが厳しい事に気づきます。

○道路から玄関まで高低差の少ない地形
玄関まで1~2M近く敷地が上がっている土地は、車いすでは出入りが出来ず、健康であったと
しても、階段の昇り降りは負担となってしまいます。
これもありがち。道路から玄関まで階段で上るのに2Mなんてあり得ません。
車いすも上がれませんし、毎日の昇り降りも苦痛です。

○中古マンションであれば、1階又はエレベーター停止階
シニアにはマンションという選択は、実はあり得ます。
建物の場所については、1階かエレベーター停止階でないと不自由です。
(殆どのマンションはエレベーターが各階停止します)
マンションの専用部分は、そもそも構造として段差が無いように造られています。
更に、リノベーションをする際は、木造の様な柱がそもそもありませんので、
壁の配置は自由に設置が出来ます。
例えば玄関や廊下の幅を広げたり、洗面所やとトイレ、キッチンを広く取ったり
する事は結構自由に変更できます。
排水の位置は制限があるのでそこは注意点ですが、間取りの自由性は木造住宅の
比ではありません。
マンションは、建物の地域性も買い物や医療施設等に近い場合が多く、その上、
建物は断熱性も高いので暮らし易いです。
戸建て住宅にお住まいだった方にとっては、意外に快適な暮らしになるでしょう。

 

広い敷地にお住まいの方に提案です

広い敷地であれば、分割売却で建て替え資金が創れます

敷地と道路との関係にもよりますが、広い敷地にお住いの場合は、敷地の一部を売却して、その
 売却費用を建物の資金の一部とする方法があります。

3000万円の特別控除も長期譲渡所得の減税も効きますので、節税対策には持ってこいです。
しかも、敷地が小さくなることで、管理(手入れ)の範囲も小さくなりますから助かりますし、
税金では不動産仲介や測量等の経費も控除できますから1石4鳥ですよ。

例えば、
現地が大阪府で、ご自宅の敷地広さが120坪だった場合だと、30坪の区画を2区画売却すれば、
坪単価50万と仮定すると約3000万の売却益が見込めます。

節税効果は、売買譲渡税は3000万まで控除(所有者がご夫婦なら6000万)が効きますので掛かり
ませんし、土地の所有期間が10年を超えておれば、長期譲渡所得として所得税と住民税がそれぞれ
10%、4%と計6%の減税になります(上限6000万迄)。
6%とはいえ、3000万とすれば180万円分の節税ですから馬鹿には出来ません。

この売却資金で住まいの建て替えを行います。
敷地も半分になりましたので管理の範囲も手間が掛らず、住まいも自由に計画が出来ます。

実際に入った実例もありますので、興味が持たれた方はご相談ください。
特例の為の条件等もありますのでご相談の際にご説明いたします。

 

リ・バース60という選択(60歳以上が対象)


住宅金融支援機構の”リ・バース60“というのをご存じでしょうか。

 60歳からの融資ですが、お手持ちの土地(敷地)がある場合にお勧めしたいです。

このリ・バース60は、土地・建物の評価の50~60% を融資してくれる事で、融資価格と
幾らかの手持ち金を合計して建て替えが可能になります。
大きな家である必要が無い為に、建築費も抑えることが出来ます。

融資分の支払いですが、毎月は融資分の利息のみで大丈夫。 元本はお二人が無くなられてから
その建物と敷地を一括処分して返済する方式です。(ここが一番の特徴)

土地建物を相続としてお考えの方は採用しにくいですが、自分達だけで相続人がいない方には
良い選択の一つと言えます。

例えば、建物資金が4000万と想定した場合、
土地の評価   2000万円
建物の評価   3500万円(500万は諸経費として合計4000万)
担保評価50%   2750万円 ・・・2750万が借入金額になります。
所要資金(現金) 1250万円(別途諸経費500万は別)

借入金2750万の利息(毎月の支払分)は、2.1%を想定しますと、年間57.75万円、
これを12か月割で、月々48,125円となります。
また、融資以外の所要現金は、1,750万円です。
1750万の資金で建て替えが出来る事になります。

余談ですが、この年間60万円近い費用を捻出する事を考えてみました。
現金2000万を平均利回り4%の投資信託等に預けていれば、毎年約手取りが約64万円あります。
この年間返済分はそれで全額賄うことが出来ると考えられます。
まあ、あくまで考えられる一例ではあります。
※これは全米株式S&P500であれば平均利回り4%であることを前提にしています。
また、4%の利回りを約束するものではありません。

 

不動産を複数お持ちの方には、”不動産の組み替え”をお勧めします。

結論からいいますと、自身が居住している場所に限らず、暮らし易い場所(建物)へ移る事を提案致します。

また、
他の資産(空き家も含めて)を負の試算になるものと、そうでないものとに整理して、全体をまとめて
処分し、評価の高い不動産へと”組み替え”する事をお勧めします。
※負の資産とは、所有しているだけで税金や管理費の必要な不動産を言います。

“不動産の組み替え”の利点は、相続時になって慌ててバラバラに処分する事にならない様に、
数ある不動産を処分して、 評価のある不動産へとまとめてしまう事です。

そうすることで短期間で確実に売却できるために、相続税を期限内に支払うことが出来ます。
皆が困るのは、税金の支払い期間(10ヶ月以内)までに時間が少なく、焦って処分する事で資産を
安売りして無くしてしまうケースが多いことなのです。

また、自分達の住まいは、組み替え時に得たお金で住みたい場所に土地を求めて建てるのは
如何でしょうか。

そこに住まないといけない、といった固定概念や土地の縛りから離れて、自由に暮らすのも実は
シニアだからこそできる事ではないでしょうか。

当社の住まい手さんにも、シニアになってから地方から街中に土地を買って家を建てられた方
もいます。 世界遺産である奈良の寺社巡りを楽しんでられます。
住み替えがもたらしてくれる”愉しみ方”ですね。

 

まとめ

60cmほどの縁側を110cmへと広げ、更に外へ濡れ縁を取り付けました。お風呂の後の夕涼みは日持ち良いらしいです。

私が60代になってみて、住まいを考えるとき、
これから何年その住まいで暮らせることが出来るのだろうと考えます。

10年、20年、30年後をイメージしてみる。
その時は自分は元気で暮らしているだろうか。
言葉に出さなくても、住まい手さんも当然考えているはずですよね。

今まで長く暮らしていた我が家から、新しく住み替えする住まいで暮らすという
イメージは、とっても不安ではないかと思います。

しかし、新しい人生のスタートを自分が昔からやりたかった夢を実現する
タイミングが、この”定年”という節目ではないでしょうか。

若い頃には仕事があって出来なかった。
この年になってやっと仕事から解放され、生活の為の住まいではなく、
住み替えで、『やりたい事を愉しむ住まい』へと変わっていくものなのでしょうね。

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